The Best Albums Of 2016 [10-1]

10. Japanese Breakfast - Psychopomp

Angel Olsen、Mitski、その次に来るであろう女性シンガー・ソングライターがこのMichelle Zaunerだろう。元々はLittle Big Leagueというフィラデルフィアのエモ・バンドに在籍しており、個人的にはその頃から好きなミュージシャンである。バンドの活動休止に伴い、ソロ・プロジェクトでの活動が精力的になっていく中で、この『Psychopomp』というアルバムがリリースされた。Yellow Kという小さなレーベルからリリースされた作品であったが、予想に反するセールスにより、ついには名門Dead Oceansへ移籍することに。Michelleの音楽といえば、何と言ってもその個性的なハイトーンボイスにあるのだが、LBL時代から培った技術も含めて飛び抜けており、今後ともいい作品をリリースし続けてくれることだろう。Adam Kolodny監督によるMVシリーズも実に面白い。

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9. Vesuvio Solo - Don't Leave Me In The Dark

意図的にR&Bやヒップ・ホップの作品はこのリストから外しているので、そうなって来るとVesuvio Soloのアルバムは必然的に高い評価となる。TOPS創立メンバーの一人であるThom Gilliesを中心としたインディーR&Bバンドの最新作。官能的でセクシーなドリーム・ポップ・サウンドは80年代ソフィスティ・ポップからの影響を感じさせるが、昨今のR&Bブラック・ミュージックとも繋がっている。モントリオールという土地柄的にもこういったサウンドは生まれやすい環境になっているのか。次々と新しいアーティストが出て来るアートの街。その中でも一際輝きを放つ彼らの作品を是非とも追ってほしいと思う。

8. Parquet Courts - Human Performance

ここ数年のうちに、ブルックリン・インディー・ロック界隈の顔となったParquet Courts。いろいろな名義でアルバムを出したりしていたけれど、気づけば3枚目のアルバムになるのだろうか。そして今作がキャリアを通しても最高傑作と言えるのではないのだろうか。2012年の『Light Up Gold』のヒットからPitchforkなどのメディアでも常連となり、今となっては知らない人もいないだろうこのバンド。新作はRough Tradeに移籍して初めての作品となる。一曲目から独特のキラーリフで持っていかれる今作は、時に激しく、時にメロウに彼らのガレージ・サウンドを最大限に引き出しているようだ。The Velvet Underground、Ramones、Television、Sonic Youthと、いつの時代もニューヨークのインディー・ロックは音楽の中心であった。Parquet Courtsは今における「それ」にあたるんだと思う。

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7. Lambchop - Flotus

Frank Ocean、Kanye West、Kendrick Lamarの新作をこのリストに入れる代わりに、Lambchopの『Flotus』を7位に入れたいと思う。ナッシュビルに拠点を置くKurt Wagnerを中心としたこのバンドも、気づけば今年で30周年を迎えるようだ。キャリアも十分なベテラン・バンドで、サウンドもアルバムによって変わってくるバンドなので、それぞれ好きな時期もあるだろう。『Nixon』『Is A Woman』あたりの90年終わりから2000年初期が彼らの全盛期であるというのが一般的な評価だとは思うが、個人的には前作にあたる『Mr. M』で、それまでの実績を塗り替えたと思っている。それから4年ぶりにリリースしたのが今作にあたるのだが、これがまた素晴らしい。冒頭の3人のブラック・ミュージシャンへのオマージュ作品だそうで、それを頭に入れて聴くとまた違った楽しみ方ができる。10分超えの曲が2曲入っていて、アルバム自体も1時間もの長い作品だ。ミニマルな展開にKanye Westらが使う手法を使って、それをLambchopというサウンドに置き換えているようだ。Wilcoが『Yankee Hotel Foxtrot』でカントリー・ミュージックの新しい可能性を生み出したが、このLambchopの新作も、そういった新しい可能性を生み出したという点で、もっと評価されるべき傑作であると思う。

6. Hoops - EP

『Tape #1』、『#2』、『#3』と立て続けに自主リリースをしたDrew AuschermanによるプロジェクトHoops。Gorilla Vs. Bearでフィーチャーされ、謎のまま評価が上がっていったこのブルーミントンのプロジェクトも、この度4人組インディー・ポップ・バンドとしてFat Possumと契約した。Real Estate周辺の音楽好きであれば聴いて間違いないサウンドだ。自主リリースの作品から個人的にも気になっていたのだが、Fat Possumからリリースされた『EP』も抜群に良かったので、この順位にさせてもらった。いわゆるリバーブ強めの昨今の人気インディー・バンドと共鳴していながら、このバンドはどこかブラック・ミュージックをルーツに置いているように感じさせる。曲作りのうまさは様々な角度から比較しても、ずば抜けているし、今から1stアルバムのリリースが楽しみでならない。少なくともこのEPよりは良い作品を作ってほしい。こんなに良い作品を作ってしまったからには、期待せずにはいられないのだが、おそらく期待を裏切らない作品を作ってくれるだろうと信じている。

5. Radiohead - A Moon Shaped Pool

バンドとしての規模が大きすぎて、もはやリストに入れるべきか最後まで悩んだバンドなのだが、ロック・バンドとしてリスペクトを込めてリストに入れさせてもらった。バンドが大きくなればなるほど、賛否両論が多くなるのは個人的には当たり前のことだし、それほど凄いバンドであると思っている。自分はこの通り超肯定派である。元々海外の音楽を聴くきっかけとなったアーティストであるし、このバンドの新作はなんだかんだで毎回楽しみだ。多くのファンと同様、自分も前作『The King Of Limbs』で、心が離れかけた一人であるのだけど、今作でまたレディへ愛が戻りつつある。冒頭の「Burn The Witch」のライヒ感には驚いたが、そこからの流れが非常に素晴らしい。これぞレディオヘッドな音である。アルバムの最後に収録されている「True Love Waits」は、ファンの間でも待望の音源化であるが、この楽曲がアルバムの最後を違和感なく務めることができているという事実が、このアルバムが再びRadioheadをロック・バンドとしてスタートさせてくれたと言えるだろう。

4. Frankie Cosmos - Next Thing

ただひたすらに最高な15曲30分。全曲が1分半〜2分半くらい。シンプル・イズ・ベストの最高峰と言えるだろう。Frankie Cosmosは本名Greta Klineによるプロジェクト。いわゆるツイー・ポップと言われる、ささやき口調なボーカルが印象的なサウンドである。アルバムはボーイフレンドでもあるPorchesのAaron Maine、その兄弟David Maine、そして彼女がかつて所属していた気鋭レーベルDouble Double Whammyでもリリースし交流の深いGabrielle Smithらと共にレコーディングが行われた。まだ22歳と若い彼女であるが、多作家でもあり自主リリースも含めると大量な曲をすでに作っていることもあり、今作は非常に洗練されたものとなっている。短い楽曲でありながら、ワンフレーズでノックアウトすることができる曲作りの才能は、彼女がBandcampを使って楽曲をアップロードし始めた当時から貫いていて、今作はその一つのハイライトと言えるだろう。

3. Nap Eyes - Thought Rock Fish Scale

ハリファックスというカナダ東海岸最大の都市にて結成されたインディー・ポップ・バンドの2ndアルバム。オーバーダブなしでレコーディングされた大傑作である。Nigel Chapmanというシンガー・ソングライターを中心としたスタンダードな編成のバンドであるが、その独特なボーカルと圧倒的なソングライティング・センスは、今年の中では一番と言っていいだろう。レーベルはGun OutfitやSteve Gunnのようなフォーク・ロック・バンドを中心としたリリースを手がけるParadise Of Bachelorsからのリリース。サウンドはとにかく無駄を排除していて、Nigelの楽曲がもっとも際立つアレンジになっている。よく比較されるのがLou ReedやStephen Malkmusのようなアーティストのボーカルであるが、個人的にはこのNigel ChapmanというソングライターにはElliott Smithのようなマイルドさが強く感じられる。どこまでも落ち着いた初期Modest Mouseのような雰囲気で、あたかも彼らの『The Moon & Antarctica』の対となるような作品だ。なんとなくこのアルバムが、90年代オルタナ・ブームから地味に続いているギター・ロックのシーンをジワジワと持ち上げてくれるような気もしているが、その地味さゆえにそういった力も特に発揮されないまま流れていくのだろう。個人的にお気に入りの曲はアルバムの最後を飾る「Trust」という楽曲であるが、そのフレーズを借りてでもお勧めしたいアルバムだ。とにかく信頼して何度も何度も聴いてほしいと思っている。

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2. Bon Iver - 22, A Million

グラミー賞を受賞した前作から5年ぶり。新作『22, A Million』が発表され、そのトラックリストに並ぶ謎の暗号のような妙な数列。この人はもはや痛いところまでぶっ飛んでしまったのだと多くの人が思っただろう。Bon Iverはシンガー・ソングライターJustin Vernonを中心としたプロジェクトであるが、ブレインである彼のほぼ全てがアウトプットされたプロジェクトでもある。一聴するとそれぞれの要素の複雑さを理解することに苦しむだろう。最初は自分もこの作品を素直に受け止めることは難しかった。R&B、ヒップ・ホップ、ゴスペル、ジャズとブラック・ミュージックからの影響が強く、それでいてフォーク、エレクトロニカ、アンビエント、さらにはクラシック・ミュージックまで、彼が描きたかった全てが詰まっているようで、それを全て頭で理解しようとすると、この作品の本質に出会えないような気がしている。個人的にはこの作品を、一人のシンガー・ソングライターJustin Vernonの作品として、ちょうど1stアルバムの頃のような一人のフォーク・ミュージシャンとして切り取って聴くことにした。すると、そのそれぞれの楽曲の素晴らしさに、改めて彼の音楽が唯一無二であることを確認することができたのだ。一人のシンガー・ソングライターの楽曲があらゆる要素で肉付けされてアウトプットされている。その方法が他の誰にも真似することができないからこそ、このアーティストが素晴らしいのであり、高い評価を受けるのだ。ただ、彼の音楽が新しいから、他と違うから、だけではない。その根底にあるのは、Justin Vernonというシンガー・ソングライターの「曲」なのである。

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1. Whitney - Light Upon The Lake

2016年たくさんの作品と出会ってきたが、このシカゴの2人組との出会いがベストだろう。Max KakacekとJulien Ehrlichによるフォーク・デュオのデビュー・アルバム。薔薇の花を使ったシンプルなジャケットとは裏腹に、壮大なサウンドを鳴らすバンドだ。2人は元々Smith Westernsのメンバーであったこととしても知られている。というか当時はフロントマンであるCullen Omoriの存在が目立ちすぎていて、どうしても軽視せざるを得なかった、いわゆる脇役的存在だ。Smith Westerns解散後Cullenはソロ活動へ移り今までの音楽の延長戦とも言える作品をリリースする中、この2人はWhitneyという女性の名前をバンド名に、これまでのアプローチとは異なったフォーク・ミュージックを基調としたプロジェクトを始める。Secretly Canadianという名門レーベルの素晴らしいバックアップと共に、2人はトランペット、ベース、ギター、キーボードと新たに6人編成で始動した。例えるのであれば、60年代カナディアンのThe Bandのサウンドが一番引き合いに出しやすいのだろうが、ドラマーでありメイン・ボーカルであるJulien EhrlichはUnknown Mortal Orchestraでのプレイも経験しており、サウンドのフレーズにも所々ブラック・ミュージックからのアプローチを感じることができる。そこがこのバンドがありそうでなかった新しいバンドに聞こえる所以だろう。フォーク・サウンドを基調にMax Kakacekのリード・ギターと管楽器のハーモニー、Julienのファルセット・ボイスが心地よく響く中、プロデューサーにFoxygenのJonathan Radoを起用したところも、サウンドをより良い方向へと導いている。自分のフェイバリットを上げると「Polly」になるが、どの楽曲も捨て曲なく素晴らしい。Smith Westernsというバンドの解散後、明暗の分かれた2組であるが、このWhitneyのアプローチに関しては、来年以降多くのフォロワーを呼びそうな予感がしている。自分が今年一番再生したということも含め、全てを総合して、このアルバムを1位に選ばせてもらった。2017年もこのような良作にたくさん出会えることを楽しみにしながら、このリストを締めさせていただければと思う。

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